タイポグラフィーって聞いた事があるでしょうか?古い事は別にして現代では文字の可読性や視認性を考慮しながら、文字の固まりを美しくレイアウトし配置する事です。ものすごく平たく言えば文字の並びの美しさをそろえる技術で、文字だけでくみ上げたデザインの事を一般的にタイポグラフィーと称します。昨今、様々な書体が出て、その特異性を競っています。しかし、変わった書体だからといって、使いすぎると、決して美しくはならない。そんな経験をした方も多いでしょう。書体には書体のアイデンティティが存在します。太い文字で見出しに最適な自己主張をする書体。かわいらしさを演出する書体。読みやすい(可読性が良いと言います)書体。それぞれに特徴がある。しかし変わっているからと言って使いすぎると決して自己主張にはならない。それはあくまで書体の主張であって、あなたの主張ではないからです。
書体選びもセンスのひとつと言えます。昔からある書体は時の経過を経て生き残ってきた書体です。それは生き残る理由があったに他なりません。明朝体なんて、その名の通り、明の時代の文字がベースになっている訳です。書道の美しい字をデザイン化して洗練された形にしたものが明朝体とも言えます。その長い時の経過で育まれた文字の形は、読みやすさ、その洗練度ともに他の書体の追随を許さないものがあります。
アルファベットのローマン体も、似たように長い歴史の洗礼を受け、進化しつつ生き延びてた伝統的な書体だと言えます。だから組んだ時に読みやすく文字と文字の隙間も非常にバランスが取れ、何も手を加えなくても洗練度の高い優雅なカタチを保持しています。
明朝体とローマン系の共通点はウロコと呼ばれる飾りがついている事です。明朝体で言えば、筆で書き出した部分と筆を止めた時に出来るたまりを、デザイン化したカタチです。
一方で伝統的な明朝系の書体とは別にゴシック系の書体があります。アルファベットでは一般的にサンセリフと呼ばれ、飾りがありません。日本ではゴシック体で通用しますが、アルファベットではサンセリフ体とグロテスク体等と称して区別されています。このゴシック系の歴史は浅く、近代に出来上がった字形です。そこから派生した書体は多く、今では数え切れないほどの書体があります。
日本では、文字のメーカーとして写研、モリサワ、リョービ、モトヤなどが有名ですが、アナログ時代は写研が圧倒的に有名でしたが、現在デジタル化された文字としては、業界では事実上の標準はモリサワの書体といっても良いでしょう。一般の方にはなじみがないでしょうが、書籍や広告や幅広く印刷物などに使用されています。写研、モリサワは写真植字と呼ばれた写植機のメーカーですが、モリサワがアドビシステムズと組み、DTPのデファクトスタンダードとなった経緯は省きます。
乱暴な分類ですが、年賀状のデザインなので、アルファベットは横に置いて、和文書体をメインに識別の為に大きく区分けしてみましょう。
明朝系…伝統的で安定感があって、可読率も高く、洗練された文字です。
ゴシック系…近代的な雰囲気で、男の書体の趣があり見出しなど強調したいときに使われます。
丸ゴシック系…ゴシック体の角を丸くした書体で、ある種女性の書体のおもむきがあります。代表的な例では一斉を風靡した写研のナールがあまりに有名。エレガントな雰囲気の書体と言えます。
楷書・行書系…いわゆる手書きの文字の雰囲気を残した書体。伝統的な味わいのある文字です。
それぞれにウェイトと呼ばれる太さの違いのある書体が存在します。さらに、上記のような系統の書体にあうような平仮名片仮名の書体も、次々と出てきています。モリサワの書体を例に取ってサンプルを表示しました。
目的に応じ、この書体を組み合わせ美しくデザインするのがタイポグラファーと呼ばれる人の仕事だと言えます。そしてその文字を組む作業そのもの、或いは結果をタイポグラフィーと称する訳です。おそらく誰もが普段週刊誌や新聞、書籍、広告などで何気なく見ている事でしょう。
このタイプグラフィーの暗黙のルールを使って、自分の名前を美しくデザインしてみようというのが、お名前デザインの試みです。