よく見るのがこのような名前のデザインです。(あくまで雰囲気だけで実際とは違います)少し古くさいですがコンピュータの全盛になっても未だもってこういう組み方が主流で、これがハガキの差出し人の入れ方の王道だ…と言われそうですが、果たしてそうでしょうか?この組み方が似合うのは昔ながらのレイアウトの場合です。デザインと名前とは不可分です。双方のバランスが大切なので片方だけ伝統的なスタイルで片方だけ斬新というのも非常に難しいものがあります。
新しいデザインには新しいお名前のデザインを適用致しましょう。その前に何故、こういうレイアウトが主流なのかのご説明を致しましょう。もともと活版印刷から来ています。ハガキや名刺などは安くて少量印刷に適した活版印刷が幅を利かせていた名残と言えるでしょう。
活版印刷とはひとつひとつの文字を鋳型で作った文字を並べて印刷する方法です。ひとつひとつの文字が母型から鋳造され手で並べられて、版画のように紙を押さつけて印刷して行く方法です。写植やDTPの登場と共に衰退の一途を辿った今となっては気の遠くなる作業です。
活字をひとつひとつ拾って組み上げていくこの手法だと、名前だけこのポイントで、住所はこのポイントでとか両方を扁平掛けてあわせるなどという芸当は出来ません。ひとつひとつ文字を入れて組むので、ここは明朝、ここはゴシックなどと贅沢を言い出したら、その分だけ活字が必要になります。ひとくちに活字と言ってもみんなが使う名前まで入れたら漢字の量は膨大な数になり、そこに大きさと文字の種類を掛け合わせたら、とんでもない数になります。活字をおく場所ですら相当広い場所が必要になってしまいます。普段使わない文字はその都度ひとつだけ別注したり、或いは写植などで打って、それを樹脂板にかたどって使う事になります。この場合もコストは跳ね上がります。
安いのが活版の良いところなのに、これでは逆に高くなってしまうのです。そこで楷書体が比較的幅を利かし、使う活字の主流となっていきます。ある程度綺麗にまとまる大きさとレイアウトの型が決まって、そのままお名前のデザインはこういうものだという思い込みが出来上がってきた訳です。一旦物事は体裁が決まると保守化していきます。それはその方が楽だからです。コストが安くつくからに他なりません。求める方も安くあげて欲しい。作る方も手間掛けたくない。需要と供給の妥協の産物が今の体裁を決めたと言っても良いでしょう。