藤田さんの年賀状にこだわりをもつ自慢の年賀状の作り方と年賀状へのこだわりをエッセー感覚で。

藤田さんの私の年賀状スタイル・とことん素材にこだわる

とことん素材にこだわる

素材にこだわる

私は年賀状のデザインと、画面を表現するマチエールにこだわるようになった。喜んでもらえる物にしたかった。初めて肉筆の画をだしたとき、感謝の電話をもらったのが動機だった。私にしか作れない、オリジナルのものを年賀状にしたかった。スケッチ画のストックがじゅうぶんある。当時、個展を三年ピッチで開いていた。芳名録に記載されている方にも出したので、数百枚にもなった。

用紙を「ハガキ」から「和紙」に変えてみた。手づくりの和紙は味があった。たちまち虜になってしまった。紙の素材は、身近にある不要紙をリサイクルして使った。広告のチラシや包装紙。古新聞・雑誌など。ミキサーで液状にして、手すきすると簡単に出来た。同じ色・模様にならないのがよい。市販の和紙にはない、世界で一枚しかないものになる。絵手紙や暑中見舞いにも使うと好評だった。

描く用具も手づくり品にした。竹・葦・割りばし・楊子をペンにする。市販のペンや筆で表せない、さまざまな種類の線が引ける。太い、細い、鋭い、素朴で味のある線。押し花を貼るのもよい。顔料は自然界にある物を使う。草木、花、柿渋。ワインやコーヒーなどもおもしろい。いずれも透明絵具に勝る色が得られる。身近にある物で、安価な材料がいっぱいあった。

版画の年賀状にも挑戦した。ユニークな作品が出来た。好評だったので三年ほど続けた。最初はゴム版から始め、木版に移った。木版は多色刷りにするとおもしろかった。手間がかかりすぎるので、版の種類を変えてみることにした。消しゴムと野菜を使ってみると簡単だった。単調で小細工するのに不向きだったので、型紙版場にすると、抽象画や半具象になるので予期せぬ効果があった。紙粘土や石こう。銅版。木の枝を輪切りにすると、同じ形のものが出来ないので味がある。木の枝は身近に入手でき、加工もたやすいので、初心者にお勧めできる。紙粘土は細密画に適し小細工が可能である。

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篆刻の年賀状

篆刻に興味をもつようになったのは、版画の年賀状からだった。技術を習得するため、二年間教室に通った。篆刻の年賀状を作るようになってからデザインの分野が広がった。画面がシンプルになり、肉筆画の絵が映えるようになった。篆刻は奥が深いが、年賀状の制作には最適であることがわかった。材料は中国産の石を使う。年賀状用には石材と併行して木材を使っている。木の枝や根の部分に彫る。材料は簡単に入手できる。

松・竹・梅・桜・椿・クスなどの枝を輪切りにする。根の部分は自然形なので、動物の姿や人の顔、乗り物などになって愉しさが増す。十二支や七福神などを彫る。賀状用として他に四十七種の仮名文字。アラビア数字。アルファベット。輪切りの枝でさまざまな文字の組合せをすると、簡単な文が出来る。

今、わたしは篆刻を主にした年賀状づくりに凝っている。希望者も多いが、わたし自身がいちばん楽しんでいるからである。今後どのように変わってゆくかわからないが、もらった方が嬉しくなるような年賀状を作りたいと思っている。

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