ファミリー家族B-03ふゆきデザイン年賀状

親不孝の論理

少年時代、私の家は古いかやぶき屋根で江戸時代に建てられた家だった。床下に簡単に潜れる造りだったので、近くの犬がこどもを産む時は私の家の床下にやってきては産んだ。あったかくて、子犬を育てるには好都合の場所だったのだろう。子犬を守る為に母犬は凶暴になり、家の裏側に回れなくなる。家のヨコに行くとかみ殺すぞ！といわんばかりに吠えるのだ。反対側に回ろうとすると、犬も俊敏に逆回転して先回りしてまた吠える。かくして家の裏に行く為には離れた飼い主を呼んできて、犬を押さえてもらってから行かなければならなかった。近いけれど、実に遠い家の裏側だったのだ。

それでも迷惑がって怒るよりも、オヤジもおふくろも犬も親が子を思う気持ちは人と一緒なんだと感心する牧歌的な時代だった。だが、親が子を思うほど、子は親を思わない。それは自分が親になって身に染みて分かる。親不孝なあなたも私も、その分はこどもに返そうとする。いくら注ぎ込んでも帰って来ない片道通行の情愛。それはきっと、返してもらう為ではなく、今までもらった分を返している…というのが正解なのかもしれない。

親不孝な奴ほどそれがよく分かるのである。

(ふゆき)